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通訳者に求められるもの~現場対応力の磨き方

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10分

通訳者に求められるもの~現場対応力の磨き方

岡崎たかこ

岡崎たかこ
都内の小さな編集プロダクションを経て、2013年からフリーのライターとして活動。取材記事やインタビュー記事を中心に、企業広報誌や各種ウェブメディアの制作に携わる。新卒採用や転職関連のほか、グルメや旅行、子育て情報などの案件を多数手がけている。

通訳の仕事をスタートさせて経験を積んでいくなかで、現場において想定外の出来事に直面することは日常茶飯事。例えば、「資料が直前に追加される」「社内用語や知らない専門用語が突然出てくる」など、予測できない事態にどう対応するかが重要です。本記事では、経験豊富なフリーランス通訳者が語る実際のエピソードをもとに、対応力を磨くためのポイントを解説します。現役通訳者はもちろん、フリーランスへの転身を考えている方もぜひ参考にしてみてください。

CONTENTS

ケース1:専門的・難解な内容の会議 【同時通訳】

言語のスペシャリストである通訳者。さまざまな会議やフォーラムなどのお手伝いをしますが、なかには専門的で難解な内容の会議もあります。例えば「医療分野の新技術」「宇宙開発の革新技術」といった高度なテーマを扱うことがあります。これらは多くの場合、専門用語や最新情報が飛び交いますが、瞬時に理解して訳す必要があります。その分野の専門家ではない通訳者にとって、専門家と同等の知識を完璧に2言語分身につけるのは非常に困難です。それでも、その分野の最先端技術について専門家が話し合う会議などで通訳を行わなければならないことがあります。 

現場での対処方法

他の通訳者と協力体制をとる


同時通訳のオンサイト案件であれば、複数の通訳者がその場にいます。自分の順番ではない通訳者に協力をお願いして、専門用語や数字などのデータを訳してもらい、メモに書いてもらうなどのフォローをしてもらいましょう。もちろん、自分の担当時間が終了したら、同じように協力します。それだけに、普段からほかの通訳者とコミュニケーションを取っておくことも大切です。

事前準備・事後の対応

自分が興味を持てないことでも、知らないことやわからないことは調べる癖をつける


超難解な会議の通訳経験は、貴重な経験、勉強の場です。ここで安定的なパフォーマンスを見せることができれば、連続指名をいただけることも多いのがフリーランスの世界です。
事前準備の段階では、専門外の人が調べても出てくる情報には限りがあります。その場合は、通訳エージェントに当日スピーカーが使う資料だけではなく、内容を理解するための参考資料やサイトURLなどをいただけないか、クライアントに確認してもらうとよいでしょう。
その場でよく理解できなかったことがあれば、記憶がしっかりと残っているうちに徹底的に調べたり、専門家の話を聞いたりしておくなどの事後学習も怠らないようにしましょう。次回のパフォーマンスを上げることにつながり、専門家の知識レベルに少しでも近づく近道となります。

ケース2:直前に資料が渡される、追加される 【同時通訳・逐次通訳】

講演やプレゼンなどの資料は、発表者がギリギリまで吟味を重ねるため、開始1時間前などの直前に資料が追加されたり共有されたりするケースがあります。また、事前に共有されていたものと大幅に内容が変わることも。加えて、資料が膨大な量になるなど、実はよく遭遇する場面です。

現場での対処方法

AIや翻訳ツール、各種デバイスを活用


いざというときのために、普段から質の高い有料版の翻訳ツールを自分のデバイスに常備しておきましょう。資料をいただいたらすぐに機械翻訳にかけ、両方の言語で概要を理解します。そして、必要と思われる単語などを頭に叩き込みます。
もちろん、機械翻訳の訳をそのまま読むのは厳禁です。機械翻訳は、あくまで概要を把握するために使うもの。専門用語をハイライトして調べ、訳落ちしないためのフォロー用として使用します。

事前準備・事後の対応1

速読スキルを身につけておく


資料の量が多ければ、読むだけで時間がかかります。速読を習得しておくと時間の節約になります。一朝一夕で身につくものではなく、地道な努力が必要なですが、非常に便利なスキルです。
暗記方法が人によって異なるように、万人に効果的な速読訓練の方法はありません。速読訓練方法の指南本が数多く出ているので、自分にあった方法を探して試してみるとよいでしょう。

事前準備・事後の対応2

時には割り切って、体調を整えることを優先


どんなに優秀な通訳者でも、寝不足をはじめとした体調の不備は、パフォーマンスに影響を与えます。特に、脳のリソースを瞬間的に大量に消費する通訳は、万全の体調が求められます。
大量の資料が前日の夕方などに送られてきた場合、数百ページの資料を徹夜ですべて読むよりは、睡眠時間の確保をおすすめします。事前の下調べで出てこなかった専門用語だけ拾って調べておきましょう。
通訳者によっては、発言時に変更されることも多いので事前資料には頼らないという方もいますが、それは普段から訓練を行い、各種の知識を身につける勉強を恒常的に行っているからこそ。直前の対処だけではなく日常的な勉強が、柔軟で高いパフォーマンスを引き出しているのです。

ケース3:長時間通訳 【逐次通訳】

同時通訳は多大な集中力が必要とされるため、複数人数で交代をしながら進めていきます。一方で逐次通訳の場合、交代がなく長時間にわたる会議などを一人で通訳しなければならないことがあります。
しかし、発揮しなければならない集中力は、どちらも同じです。

現場での対処方法1

発言の隙間を狙い、短めのタイミングで通訳を入れる


逐次形式で1回の話が長すぎるために集中力が途切れそうになった場合、あえて短めのタイミングで通訳を入れてしまう方法があります。思い切った方法で、それなりの度胸が必要であり、スピーカーが戸惑う可能性がありますが、通訳者にとって重要なのは不明確な訳出や、訳落ちを避けること。それは会議全体から見ても大切なことになります。パフォーマンスの質を下げないためにも、短めに切って正確でわかりやすい訳出をキープし続ける信念を持ち、時に思い切って行動することも必要です。

現場での対処方法2

ゼリー飲料でエネルギー補給


チョコレートは、即効性が高い脳へのエネルギー補給として定番ですが、声を出し続ける通訳者の喉には少し刺激が強いといった懸念があります。長時間通訳の現場では喉のケアも兼ね、ブースト力があり水分も一緒に取れるエネルギーゼリー飲料を用意しておくのがオススメです。なお、お菓子や甘いものが苦手な通訳者は、事前に糖質の多い食事をとったり、合間にフルーツを取り入れたりといった工夫をしている人もいます。

ケース4:スピーカーの発言が聞きとりにくい 【同時通訳・逐次通訳】

多くの人が集まる会議などでは、さまざまな人が発言します。スピーカーの話し方も人それぞれ。まさに現場対応力を求められる場面です。

現場での対処方法1

100%の訳出量にこだわり過ぎず、ゆっくりと自分のペースを保つ


早口で述べられる発言や不明瞭な発言を早く、すべて訳そうとすると、ますますわからなくなってしまいます。スピーカーのテンポに流されないようにするのと同時に、自身の中で訳出量を70%程度などと決め、その70%をわかりやすいものにするよう努めましょう。また、訳出の際には、自分のペースを保つためにも、あえてゆっくり話すと落ち着いて対応できます。
同時通訳の場合は、ケース1の難解な会議同様に、ほかの通訳者と協力体制をとりながら進めていきましょう。

現場での対処方法2

文字起こし機能などを使用する


会議運営者に依頼または許可を得ることが大前提ですが、会議ツールの文字起こし機能をONにしてもらうか、自分で文字起こし機能を使うのもよいでしょう。文字起こし機能は、意外にも人間の耳では聞き取りにくかった言葉をうまく拾ってくれることがあります。書き起こされた文字情報と比較・確認しながら、訳出ができます。

事前準備・事後の対応

普段からネイティブに近い英語力を高める


どの通訳者も普段からスキルアップに力を入れていると思いますが、同時通訳、逐次通訳の訓練としてシャドーイングをしてみるのもオススメです。なぜなら、日本語ネイティブが早口や方言をある程度理解できるのは、音や言葉を聞き取れるかどうかだけではないという説があるためです。使っている言葉や意味が、音と一緒に捉えられるようになっていることは大切であり、加えて「この言葉を使っている場合は、このことを言っている」と慣習的なものを知っているだけで訳出に変化が生まれていきます。
訓練をする場合は、ネイティブが出演するバラエティー系のポッドキャスト番組などが早口なこともあり、利用しやすいでしょう。

ケース5:会場やオンライン通訳時における音声トラブル 【同時通訳・逐次通訳】

通訳現場において、想定外でありながらも意外と多いのが、音声に関するトラブルです。初めて行く現場がどういう環境なのかについて、情報が少ないどころか、まったくないということもあります。現場では、スピーカーのケース同様に文字起こし機能などを使用するなどの対応をとることになるため、主に事前の準備を紹介します。

事前準備・事後の対応1

オンラインの場合は、高性能なイヤホンマイクを用意


オンラインの会議などは、相手側の通信環境も関係するため、通訳者側はノイズキャンセラー機能が強力なイヤホンマイクや、手元で音量調整ができるリモコン付きイヤホンマイクなど、音質環境の悪さを補える高性能デバイスを用意しておきます。いろいろな機種を試してベストなものを探しておきましょう。もちろん、予備も用意しておきます。iPhoneの付属イヤホンは意外と高性能なので予備としてなら活用できますが、こちらをメインとするのは控えておいたほうがよさそうです。
また、オンラインで通訳を行う場合は、通訳者にもITリテラシーが求められます。普段からITリテラシーを高めておくことも肝要です。

事前準備・事後の対応2

エージェントサービスを有効活用する


エージェントサービスを利用して仕事を受けている場合は、
事前に現場の環境について詳細を確認してもらうようにしましょう。場合によっては、エージェントサービスの提案により通訳専用機材を入れてもらえることも。また、必要に応じてエージェントからクライアントに、通訳環境のアドバイスをしてもらうことも視野に入れておきましょう。

ケース6:クライアント、スピーカーからのリクエスト【同時通訳・逐次通訳】

対話型会議での通訳の場合、スピーカーから「今のは訳さなくていい」など、リクエストされることがあります。そのほかにも、通訳しない方がよいのか、した方がよいのか、判断を迷うケースがあります。

現場での対処方法1

その場でクライアントに確認し、指示に従う


基本は、その場で確認して、クライアントの指示に従うのがマナーです。
例えば、A社(日本語)とB社(英語)の会議において、A社から通訳依頼をうけ、A社の通訳者として入っているときに、B社のスピーカーから「訳さなくてよい」と言われた場合、その場でA社に確認します。A社がその場で「通訳してください」と指示するのであれば、B社側にそういった指示を受けた旨を伝えて通訳します。A社がその場で「通訳しなくてよい」という指示するのであれば通訳はしません。しかし、その後の通訳で必要な情報が出てくる可能性があるため、通訳者としては訳さなくていい会話も聞いておき、メモは取っておきます。

注意すべき点としては、A社がその場では「通訳しなくてよい」と指示を出したものの、会議が終わってから「通訳しなくてよいと言ったけど、どういう話をしていたの?」とA社に聞かれた場合です。B社に通訳する旨を伝えていないので、答えないようにしましょう。クライアントの指示に従うといっても、あくまでその場でB社にも説明ができる状態であることが前提です。B社に確認ができる環境の中で、クライアントリクエストである「通訳業務」に応えるスタンスを持ちます。ステークホルダー全てに配慮することも、通訳者の対応力の一つです。

そのほかの求められる対応力

ケース別で具体的な対処方法を紹介してきましたが、ここでは通訳者として全般的に求められる対応力について触れたいと思います。
通訳者は「縁の下の力持ち」「黒子」と言われるように、表に出ず舞台裏で活躍する仕事と表現されることがあります。だからといって、通訳だけしっかりしていればよいというわけではありません。優秀な通訳者ほど、社会人としてのビジネスマナーや対人スキルが高いもの。社会人としての振る舞いがきちんとできるかどうかは、通訳者にとっても重要な対応力の一つといえそうです。
といっても特別なことでも難しい事でもありません。社会人として一般的なレベルで大丈夫です。この機会に改めて自分を振り返ってみてはいかがでしょうか。

身に着けておきたい対応力1

社会人としてのビジネスマナー


「内輪のラフな会議だから」「オンライン会議だから」といって、身だしなみを疎かにしていいわけではありません。社会人である以上、身だしなみは最低限、整えましょう。服装をはじめとした身だしなみは、相手に対して「あなたに会うにはこのくらいでOKです」というメッセージを表すものだといわれています。上下そろいのスーツである必要はありませんが、清潔感と現場のTPOに合わせた服装が望ましいものです。

身に着けておきたい対応力2

多くのステークホルダーの中で立ち回る対人スキル


「仕事で関わる方には、相手の立場や職種・年齢など人によって態度を変えることなく、すべての方に丁寧に応対するようにしています」とは、ある通訳者の言葉です。
通訳現場では、クライアントだけでなく、エンドクライアントやエージェント、同業の通訳者、その他のステークホルダーを含め、さまざまな方と関わります。クライアントのステータスは関係ありません。現場にいる人であれば、たとえ通訳機材を設置しに来た若いアルバイトの方でもぞんざいな対応はしないようにしましょう。経験が浅い若手通訳者であっても同様です。事前のやり取りが発生する場合には、相手の都合などを考慮し、速やかに返信・対応するといったことにも配慮します。

まとめ

  1. 通訳現場で突発的に起きる「どうすればよいのか?」といった事態。そんな場面で臨機応変に対応していくには経験が必要。しかし、事前にちょっとしたコツを知識として知っているだけでも、落ち着いて対応がしやすくなる。

  2. ビジネスマナーや対人スキルといった社会人としての全般的な対応力にも配慮できれば、現場でスムーズに通訳パフォーマンスを発揮することにつながる。クライアントや同業の通訳者から、「通訳を入れてよかった」「また一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるようにしよう。

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